2012年04月02日

地獄へのきっかけは、ちょっとした下心 by塔山郁

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ささいな好意が大きな幸運につながるおとぎ話、「わらしべ長者」。
一方、ちょっとしたつまずきやいたずらが、
地獄への道につながることもあるのでは――。

塔山郁さんの新刊『最悪のはじまりは、』(4月6日発売予定)は、
まさにそんな物語。

三人のギャンブル中毒者たちが、底辺から這い上がるために、
ある単純な計画を練るのですが、思わぬ方向に彼らを動かしていきます。

普通の幸せを手にしたいだけなのに、
ちょっとした選択を誤ると、それはどん底に落ちていってしまう――。


塔山さんに、作品の魅力を語っていただきました。



(『このミス』編集部)
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三作目となる「最悪のはじまりは、」を上梓しました。
テーマはギャンブル依存です。

ギャンブルにハマって借金を作り、家族や恋人を苦しめる愚かな人々。ミステリーに限らず、テレビドラマや映画にそんな人々はいくらでも出てきます。

しかしそのほとんどは端役であり(善良な主人公を苦しめる役どころだったり、粗暴な犯罪に手を染める敵役だったりとそれぞれですが)その行動原理が語られることはありません。

 なぜ彼らはギャンブルに手を染めたのでしょうか。なぜ借金が膨らむほどにのめりこんでしまったのでしょうか。

しかし端役である彼らの内面が語られることはありません。それも当然かもしれません。そんな理由づけをする必要もないほどに、ギャンブルにハマって借金を作る人間は現実世界にあふれているのですから。

この小説の主人公は、三十歳の誕生日を目前に控えた若者です。
仕事は不規則な時間帯の準社員。東京で一人暮らしをしながら、資格取得の勉強をしていますが、恋人も親しい友人もいない状況に、将来の不安ばかりが募ります。

ある日、パチンコ店で不良少年にからまれます。その時、助け舟を出してくれた常連客の男と親しくなりますが、男は常連客だという女性を紹介したうえで、ある計画に参加しないかと彼を誘います。それは三人の陥った苦境を一挙に解決する魅力的で危険な計画でした……。

なぜ人はギャンブルにハマるのか。そこから抜け出すためにはどうすればいいのか。

ミステリーの仕掛けの中に、そんなテーマを埋め込んでみました。
ギャンブルをする方はもちろん、しない方でも楽しんでいただける内容ですので、ぜひご一読ください。
なおパチンコを題材にした犯罪小説ですが、アンチ・パチンコ小説ではありませんので悪しからず。ちなみに小説はこんな風に始まります。

怪物を模したギミックが顎をひらいた。
雄叫びがあたりに響き渡る。隣の中年女性が、興味津々の様子で聡の台を覗きこんできた。液晶画面では怪物のようなロボットが、迫り来る数字を両手で引き裂いていくところだった。 



塔山郁 



●著者プロフィール
とうやま・かおる。1962年、千葉県生まれ。
毒殺魔の教室』にて第7回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、
2009年デビュー。
他の著書に『悪霊の棲む部屋』がある。
最新刊『最悪のはじまりは、』4月6日発売予定。

※『このミステリーがすごい!』大賞HP

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2012年04月02日