2012年11月06日

どんな嘘も見破る美人女刑事、誕生! by佐藤青南

◆◆◆◆◆

こんにちは。

この度、新しい女刑事が誕生しました。その名も「エンマ様」。
鬼のような形相&たくましい体つきを思わせるニックネームですが、
暴力や権力に任せて事件を解決する、なんていう体育会系? 女子ではありません。

著者の佐藤さんに、エンマ様、そして新刊『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』の魅力を語っていただきました。


(『このミス』編集部)
◆◆◆◆◆



ちーす、佐藤青南です。
唐突ですが“女の勘”という言葉がありますよね。
一般的に女性は男性よりも勘が鋭く、相手の嘘を見破る能力が優れているといわれます。
男性諸氏には心当たり、あるんじゃないすか?
僕もけっこう痛い目に遭ったクチでねえ……などという個人的な体験談はひとまず置いといて。
実はこの“女の勘”には、“勘”などという曖昧な言葉では済まされない、明確な根拠があるというお話をしましょう。

男女間では肉体の構造にさまざまな違いがあり、頭蓋骨の形状にも性差があります。
それぞれの骨格の特徴を思い浮かべてみてください。
個人差こそあるものの、男性のほうが額や頬骨がせり出している印象がありませんか?
その形状の違いにより、女性は男性よりも視野が広くなっているのです。
せり出した額や頬骨が視界をさまたげ、男性の視野を狭くしているんですね。
女性は男性より広い視野で相手を観察するために、『なだめ行動』を視界に捉えやすく、だから相手の嘘を見抜く能力が高いのです。

『なだめ行動』とは、嘘をつくことによる心理的圧迫を軽減しようとする、無意識な肉体の反射です。
目もとを覆う。鼻を触る。髪の毛を弄ぶ。舌で唇を湿らせる。貧乏揺すりをする。
生粋の詐欺師でもない限り、嘘をつく人間が完全な平静を保つことなどできません。意識はしていなくとも、逆に意識して抑えようとしても、嘘は『なだめ行動』となって身体のどこかに表われているのです。
広い視野に『なだめ行動』を捉えた女性がそれを違和感として認識し、「なんか怪しい」という疑念を抱くに至る。
これが“女の勘”の正体というわけです。

しかし「なんか怪しい」レベルなら、まだ逃がれようがあります。
女性は違和感の根拠を自覚していないから、白を切り通すことができます。
「おれのことが信じられないのか!」と逆ギレしてみるのも、ときには有効でしょう。
ですが、「喉もとを触る『なだめ行動』を見せた」とか「唇を噛む『なだめ行動』をした」などと根拠を明示しながら追及されたらどうでしょうか。

無敵です。
もはや弁解の余地はなく、“いつ土下座するか”という問題になってしまいます。
そんな女性が実在したとしたら……
どんなホラー映画や怪談よりも恐ろしい話ですね。

拙著『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』の主人公、『エンマ様』こと楯岡絵麻は、まさしくそんな女性です。
驚異的な洞察力・観察眼で『なだめ行動』を見極め、行動心理学を駆使して百発百中で被疑者を自供に導く警視庁捜査一課の取り調べにおける最終兵器。
しかしプライベートではその能力ゆえに男性の嘘を見抜いてしまい、幸せから縁遠くなっています。
知らないほうが幸せということも、世の中にはたくさんありますからね。
僕も執筆にあたって心理学の本を読み漁るうちに耳年増になってしまい、「脚を組んで心理的防壁を作られてるな」とか、人と会うときに面倒くさい分析をするようになってしまいました。

というわけで世の男性諸氏にご忠告。
奥様や恋人が『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』を読んでいたらご用心を。
にわか『エンマ様』に隠し事を暴かれてしまう恐れがあります。
やましいことのある人は、潔く土下座の練習でもしておくべきでしょうね。
もしくは自分でも同じ本を購入して、対策を練ってみるとか。

でもたぶん勝てないけどね、女性には。

佐藤青南


●著者プロフィール
さとう・せいなん。1975年、長崎県生まれ。
第9回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し、
『ある少女にまつわる殺人の告白』にて2011年にデビュー。

最新刊『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』
11月6日発売。


※『このミステリーがすごい!』大賞HP

posted at

2012年11月